院長ってどんな人?⑤
~ストーリーで読み解く院長の人生と人間性~
- 1.はじめに
- 2.理学療法士 なるまでストーリー 学生編
- 3.理学療法士 なるまでストーリー 社会人to学生 編
- 4.理学療法士 なってからストーリー 臨床現場デビュー編
- 5.理学療法士 なってからストーリー 帰京~開業決意編
- 6.理学療法士 なってからストーリー 開業準備~開業~そして現在編
- 7.おわりに
5.理学療法士 なってからストーリー 帰京~開業決意編
東京に帰ってきてからは慢性期専門病院と整形外科リハビリクリニックでそれぞれ主任として勤務してきました。
後述しますが、その中でも開業前まで働いていた整形外科リハビリクリニックでの経験がこのあとの整体院開業に大きく影響を与えることになりました。
東京に帰ってきて最初の5年は180床ほどの病院のリハビリ部門で勤務していました。
途中から主任として管理業務することも増えてきた中、自分の今までを振り返り、これからを考えることが多くなりました。
「主任として仕事のやりがいはある。患者さんにも喜んでもらっている。
このままここで定年まで働いていくことはできる。
でも自分が今一番やりたいと思えるリハビリってなんだ?
どんな人を、どんな疾患に対してのリハビリが一番好きで得意なんだっけ?」
と思うようになりました。そして出た答えが
『「腰痛」「五十肩」「膝痛」などの日常生活での身体の痛みで困っている人の力になりたい』
『痛みのせいで普段の仕事、家事に支障が出ている人、好きなことを諦めている人達の悩みに貢献したい』
『手術しかないと言われて失意の底にいる人たちに希望を与えたい』
でした。
きっと名古屋時代に師匠の元で「運動学」「解剖学」「生理学」を楽しく学びながら、多くの整形疾患の患者様を診させてもらい、疾患が改善していく姿、患者様の笑顔を多く見てきたからだろうと思います。
その考えが固まってから僕は整形外科リハビリクリニックを探して転職しました。
管理職ではなく、現場の最前線で治療に専念したかったからでした。
そこでは僕の得意な疾患が、治してあげたい患者さんが山の様にいらっしゃいました。
ドクターと連携しレントゲン、CT、MRI画像を見ながら何度もディスカッションをして疾患に向き合い、多くの患者さんの痛みを取り、日々の生活が楽になる手助けをしてきました。
そこで患者さんからありがたいお言葉もたくさん頂きました。
「わかりやすく説明してくれるから安心して自分の体を任せられる」
「家でどうすればいいか教えてくれるから自分でケアができる」
「こんなに痛みに親身になって向き合ってくれて嬉しい」
「もっと早くこちらに来ていれば良かった」
などなど。とても充実した治療家生活を送っていました。
しかしこんな声もありました。
「他院ではこんな説明はしてくれなかった」
「他院で教えてもらったことを家でやってみたら痛みがさらに増した」
「保険が効いて安いから行っていたけど、効果はなかった」
「こちらの理解度は無視して高い回数券を売りつけられた」
いままで他院で施術を受けてきたみなさんの声にもびっくりしましたが、
「身体の痛みはそうやってごまかしていくしかない」
「どこでやってもらってもそんな感じなんでろう」
当院に来るまで、上記ような認識の方が多いことにびっくりしました。
僕が教えてもらった、学んできた理学療法とはそんなことではない。
治療とは、施術とは、患者様にそういう思いをさせることではない。
そんな思いをしている人たちがまだ多くいるのであれば、今とはもっと違う形で、違う環境で困っている人たちの力になれるんじゃないか・・・。
もっと一人一人の患者様に集中できて、時間をしっかりとって全身を診れて、さらに再発予防をしながら、患者様の「健康であり続けられる人生」に携わっていける環境はないのか・・・。
そう思うようになってきました。
しかし理学療法士が保険適用外で自分一人でやっていくには「整体院」を立ち上げるしかない・・・。
雇われでしか働いたことのない自分に独立開業なんて・・・。
でも自分が本当に120%お客様に集中できる環境なんて、自分で作る以外ないんじゃないのか・・・。
そしてその思いは消えることなく、どんどん大きくなっていきました。
これが開業を強く意識し始めたきっかけでした。
そこですぐに「よし!それじゃ、退職して開業だ!(‘◇’)ゞ」 なんて訳にはいきません。
僕には現在愛知県での勤務時代に知り合い、その後結婚して東京にきてくれた妻がいます。
これまで人生のいろんな場面で僕を支えてくれた妻に、夫がこれから独立開業というこの上なく不安定な選択を選ぼうとしているなんて伝えたらなんて言うだろうか。
いろんな言葉が頭をよぎりました。
「もう一人じゃないんだから、家族の事も考えてよ!」
「資格があるんだから、別の病院でもクリニックでもいいじゃない」
「もうその年で夢を追うなんて遅いでしょ!現実を考えてよ!」
当然です。
結婚して二人で生活していくということは二人の人生を歩んでいくということですから、結婚してから大きなリスクを抱えて夢を追うなどということは当然考えられません。
そんな類の言葉をいくつも頭の中で用意して、自分の夢を諦める保険をかけながら妻に相談しました。
すると妻から帰ってきた言葉は、
「いいじゃん!絶対いいよ、独立!一人でやるの向いてるって。やりなよ!」
「絶対今がいいタイミングだって!いつかやれたらって言ってたじゃん!」
「徹さんの施術を待ってるお客さんが絶対いる!大丈夫!やれるよ!」
と、即答でした。
あまりに自分の予想と違いすぎて、妻の言葉をそのまま理解するのに10数秒かかったことを覚えています。
確かに昔、整形外科リハビリクリニック勤務中、施術に手ごたえを感じていた時に
「いつか独立して自分の店舗で困ってるお客さんの力になれたらなぁ」
とは妻に言っていました。
しかしいざ現実になると、定期的に頂いていた給与ではなく、やったらやっただけの歩合制。
お客さんがゼロなら収入ももちろんゼロ。
何度も今から夫が不安定な独立開業を目指すことのリスクを確認しましたが、妻からは
「大丈夫。私も働いてるんだし、二人で頑張れば大丈夫」
「あなたならできるよ。年を取って『あの時・・・』って後悔はしてほしくない」
と決意は変わらず。
妻よ・・・。あなた器でかすぎ。
それは不安で自信が揺らぐ自分自身が恥ずかしくなるくらいの強い思いと信頼でした。
そんな妻の後押し、理解もありここで「独立開業」を決意することになりました。
この記事を書いた人
廣川 徹
昭和49年生まれ。板橋区の腰痛専門整体院 T's整体院の院長。理学療法士として17年間、整形外科リハビリクリニックや外来患者様中心の病院、慢性期専門病院、有料型老人ホーム等で働き約10万件以上の施術経験をし、多くの患者様の痛みの改善、生活の質の向上に貢献。